勝率.583(14勝10敗1分)――投打の柱が機能し、上位へ食らいつく
8月のファイターズは25試合で14勝10敗1分。貯金4つを作りました。一方、首位ソフトバンクは15勝9敗で勝率.625。数字上はわずかな差ですが、直接対決や取りこぼしの少なさが最終盤の明暗を分けます。今月は「先発の粘り」「救援の安定」「中軸の長打力」という3本柱が噛み合い、接戦を確実に拾った印象です。
1.先発投手陣:エース格が軸を作り、若手が支える
8月の先発は、伊藤大海・北山亘基の両右腕が“安定の二枚看板”。伊藤は4試合で防御率0.90、30回で34奪三振の圧巻内容(2勝1敗)。北山も防御率2.03(2勝1敗)と試合をしっかりと作る投球を続け、カード頭・中盤の流れを作りました。ここにきて頼もしい活躍を見せてくれているのは福島蓮。3登板で防御率1.93、勝負所で要所を締める“勝てる先発”。達孝太は防御率3.26とビックイニングを作られる課題が浮き彫りになったものの、乗っているときの支配力は素晴らしいものがありました。この二人の強さはボール先行でもゾーンで勝負できる球の強さと度胸でチームの勝利に貢献してくれました。一方で、山﨑福也(4.43)・加藤貴之(5.32)は本来の完成度からすると苦しい数字。球威・制球ともに精度が悪く、序盤の失点や一発(被本塁打)が重く響きました。
8月は完投勝利がなく、先発陣全体で25試合の成績は9勝8敗と、「先発で勝ち切る試合」が少なかったと言えます。とはいえ試合を壊すことはなく「先発がゲームメイク→中継ぎ勝ちパが締める」勝ち筋を示せたのはポジティブです。
先発トピック(ピックアップ)
- 伊藤大海:ストレートで空振りが取り返せる状態。月間被本塁打1本、与四球も5に抑制。ゲーム支配力が段違い。
- 北山亘基:フォーク・スライダーの縦横配分が良化。3被本塁打は課題も、与四球は7に収まり、安定感がある。
- 福島蓮/達孝太:ゾーン内で勝負できる球威と変化球が魅力。若手だが頼れる存在に。
2.救援陣:無失点リレーが勝ち試合の“形”を固定
8月のブルペンは“安定”のひと言。齋藤友貴哉が11試合防御率0.00、上原健太も10試合0.00と、リード時の7~8回を完璧に封鎖。柳川大晟も6試合0.00で勝ちパの一角を固めました。さらに田中正義(2.08)、玉井大翔(1.50)、生田目翼(1.64)、金村尚真(1.64)と、先発が苦しんだ後をリリーフ陣が守り切ったことが“貯金4”の本質です。
一方で、山本拓実(6.35)、河野竜生(12.46)がピリッとせず。左のリリーフが勝ちパターンの上原のみになっているのが課題と言える。
救援陣トピック
- 齋藤友貴哉、上原健太の火消し力に助けられた8月。
- 抑え柳川の安定感も抜群。(現在は調整中も、9月は帰ってくるだろう)
3.打線:レイエスの圧、田宮・郡司・野村の巧打で得点をブリッジ
中軸はレイエスが月間8本塁打・OPS .926(打率.284/出塁.333/長打.593)と強烈。得点圏でも大きな一打を重ね、8月の“得点のスイッチ”役を務めました。周辺では田宮裕涼が打率.345/OPS .822と高打率をキープ、郡司裕也も(.329/.383/.425(OPS .807))でチャンスメイクとタイムリーの両面に貢献。野村佑希は.324/OPS .816と上げ調子で、オリックス戦では劇的なサヨナラ打を放つなど大活躍でした。
一方で、万波中正は.197(HR2)と本来の破壊力が鳴りを潜め、清宮幸太郎は出塁.315と粘るも長打率.284で“怖さ”が減少。また五十幡亮汰が.254、水谷瞬が.250で得点へ絡む活躍を見せてはいたが、大活躍とまではいかず。ここに石井一成の.244(出塁.318)イニング単位での“出塁の連鎖”をどれだけ長く保てるかが次月のカギになります。
打線トピック
- レイエス:一振りで流れを変える“月間8発”。対速球の捌きが秀逸で、相手先発の配球を変えさせる存在感。
- 田宮・郡司・野村:高出塁&単打+長打のブリッジで、ビッグイニングを複数創出。
4.今月のベストゲーム(体感ベース)
8月のカギとなった3試合を選出。
- 3連敗から反撃の狼煙:8月13日、福岡でホークスに3連敗した後のホームで迎えたロッテ戦。先制するも山﨑福也が中盤に逆転を許した後、相手先発種市の前になかなか打線がつながらない。このまま嫌な流れで連敗かと思われた8回、レイエスが反撃の同点ソロホームラン。9回には打線がつながり、水谷がサヨナラヒットで勝利。福岡での嫌なムードを振り払った1試合となった。試合記事リンク:8/13(水)日本ハム 3x-2 ロッテ 終盤の逆転でサヨナラ勝利!レイエス起死回生同点ホームラン!水谷サヨナラタイムリー!!
- 絶体絶命からの大逆転サヨナラ勝利:8月19日、ホーム6連戦の初戦vsオリックス。いい流れで試合を進めていたが先発の達が満塁ホームランなどで一挙5点を失い、試合をひっくり返される。オリックスリリーフ陣の前に抑えられていたが、9回ヒットと四球で満塁のチャンスを作ると、野村が右中間を破る3点タイムリー2ベースを放って逆転勝利。その後の試合に勢いをつけた。試合記事リンク:8/19(火)日本ハム 6x-5 オリックス 劇的!大逆転勝利!野村佑希サヨナラ2ベース!4安打4打点の大暴れ!!
- 史上最高の投手戦:8月24日、ソフトバンクに2連勝で迎えたエスコン6連戦の最終戦。モイネロvs伊藤大海の投げ合いは両者一歩も譲らない投手戦。モイネロが8回126球無失点、伊藤大海が9回129球無失点で決着はつかず。試合は延長10回裏に満塁のチャンスで奈良間がセンター前へ運ぶサヨナラヒット。福岡での借りを返した。この試合でホークスにゲーム差0.5と肉薄。これでホークスのマジック点灯を阻止。9月の優勝争いに望みをつなげた。試合記事リンク:8/24(日)日本ハム 1x-0 ソフトバンク 劇的!サヨナラでホークスを3タテ!!伊藤大海9回129球11奪三振無失点の熱投!!奈良間サヨナラタイムリー!!
5.月間“チーム内”アワード(独自選定)
- MVP(打):レイエス…8HR・OPS.926。相手バッテリーの配球バランスを崩し、打線全体に好影響。
- MVP(投・先発):伊藤大海…0.90・30回/34K。カードの流れを決める試合で完璧な仕事。
- MVP(投・救援):上原健太…10試合0.00、2勝H6。火消しも上位打線もいつでも無失点。“積み上げ”が月間勝ち越しの根幹。
- 躍動賞:田宮裕涼…打率.345。攻守走のトータルで“勝てる捕手”へ。
6.数字が語る勝ち筋と課題
- 勝ち筋:シーズン序盤の勝ち筋だった先発が試合を引っ張って勝つ。という流れからリリーフが粘って、打線が追いつき、追い越す。今月はこの“粘り”の重要性を大きく感じました。特に斎藤友貴哉、上原健太の無失点投球は、攻撃への流れを作ってくれる。
- 課題(投):一発の被弾。加藤・山﨑ら技巧派が不用意に甘く入ったボールを長打にされる場面が散見。ゾーンで勝負できる球の強さ(内寄り速球)と低めへボールを集める重要性が必須。
- 課題(打):中軸以外の長打不足と出塁の波。万波・清宮の“長打面の復権”、下位~一番の出塁をもう半歩引き上げると、レイエスの前に走者が溜まり一気に破壊力が増します。
7.9月への期待
- 打線固定の是非:勝負のエスコン6連戦では、新庄政権初と言ってもいい。6戦連続同じメンバーで打線を組んで、5勝1敗と素晴らしい戦いを見せた。シーズン終盤はどう戦っていくのか。
- 外野陣のスタメン争い:万波、五十幡、矢澤、水谷をどう使うか。レフトに郡司、野村を起用する場合はさらに激化する。
- 先発ローテーション:伊藤、北山は確定。達、福島もこの調子ならフル回転か。山﨑福也、加藤貴之の2人がどこまで上げてこられるか。古林は今シーズン間に合うのか。
- 中継ぎのコンディション:8月フル回転だった中継ぎ陣はこのままのコンディションでシーズン走り切れるのか。
- ソフトバンク戦残り3戦:9/9、9/18、9/30の3戦を誰で戦うのか。
8.まとめ
8月のファイターズは、エース級の安定と救援陣の鉄壁リレー、そしてレイエスの一撃に田宮・郡司・野村の巧打が噛み合い、勝率.583(14勝10敗1分)という確かな積み上げを作りました。首位ソフトバンクとは1ゲーム差。ソフトバンクと全力の優勝争いを最後まで全力で愉しみ、素晴らしい景色を見に行きましょう。
8月選手成績:8月打撃成績:8月投手成績(先発):8月投手成績(リリーフ)
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